「美STはなぜ、J-BEAUTYを掲げたのか?」齋藤薫さんが〝美ST J-BEAUTY〟発信者 編集長・千田真弓に問う

美容業界の裏も表も知り尽くし、日本の化粧品への理解と敬意も深い齋藤薫さん。今回の特集への協力をお願いしたところ、なんと「美STのJ-BEAUTYについて、千田編集長から直接話を聞いてみたい」という逆取材のご提案をいただきました!日本を代表するジャーナリストが編集長に問いを立てる、他にはないスタイルで時代性から美STが掲げるJ-BEAUTYの哲学まで、齋藤さんが読み解きます。

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J‒BEAUTY…… それは単なる 「日本のコスメ礼賛」ではなかった!

雑誌が世の中を変える…。女性誌が女性たちの意識を変え、人生観を変える…。かつてそれは珍しいことではなかった。でも今これだけ情報が溢れ、全てが一瞬で手に入る時代、雑誌はどんな役割を果たせるのだろう。そう思っていた中で出合ったのが、美STが掲げた「J‒BEAUTYへのオマージュ」だった。それは単純な、〝日本のコスメ礼賛〟ではない。何かもっと深く、温かい、大切な想いを含みつつも、画期的な提言であるのは確かだった。何よりSNSが主流の時代にあって、雑誌にしか起こせないムーブメントの躍動をそこに感じたのだ。だから率直に、この新提言についてもっと知りたいという思いが募り、発信者である美ST編集長、千田真弓さんへのインタビューが実現したのである。

まず聞きたかったのは、日本の化粧品だけにフォーカスを当て続けるのは、美容誌としては大きな決断ではなかったかということ。

「そういう意味で確信を得たのは、読者の声でした。〝離婚届けを提出したその足で、クレ・ド・ポー ボーテのスキンケアラインを買いに行き、絶対にこの生活を落とさないようにしようと心に決めた〟という話にジーンとしたり。また同じく離婚にまつわるエピソードですが、〝離婚して、子供2人を育てないといけないとなった時に、生活水準が落ちるのを覚悟し、化粧品もラインを落とそうとある意味妥協で雪肌精の化粧水を買ったのだけれど、使ってみたら驚くほど実感があってとても救われた。こんなにシンプルなのにこんなに凄いの? と。今は毎年母の日に子供たちから雪肌精が贈られている〟と聞いてまた深く感動したり。就職、結婚、出産、様々なキャリアアップと、人生のいろいろなシーンにJ‒BEAUTYがあったという話に、それぞれの人生を支えてきたのが日本の化粧品なのだと思ったら、何か心が震えて。外資系の化粧品ももちろん素晴らしいし、これからも丁寧に伝えていきたいと考えていますが、J‒BEAUTYと日本女性を繫ぐ絆のようなものこそ、心を込めて伝えたいという思いに至ったのです」

今や世界中が知る日本のモノづくりの緻密さと技術の高さ。化粧品も例外ではない。でもそこだけにスポットを当てる試みではないのだ。多くの人が見落としがちなのは、日本の化粧品が持っている精神性。研究から販売まで、そこに関わった人たちが注ぎ込む魂のようなもの。それが人生でつまずいた時などにふっと寄り添ってきて、黙って人を支えるような、不思議な力があることなのだ。そういうものを肌と心で感じ取ることができるのが、大人世代であり、美STなのだと言っていい。美を感性で取材し、使命感を持って記事にできる大人の美容誌として。

「研究者の方々を直接取材するほどに強く感じるのは、日本の研究者は凄いことをしているのに実に謙虚で、自らを必要以上にアピールしないこと。しかも上流でモノを作りモノを言うのではなく、私たちのすぐそばまで来て製品を作ってくれている。資生堂の江連さんのように、研究の最前線にある方がマッサージ法まで考え、毎日続ける上でこの動作は面倒だろうと熟慮する。まさに、科学という技を持つ職人さんなんですよね。でもその一方で、企業の一研究者を超え、この業界や世の中はどうなっていくべきかという大きな視野でモノを見ている方が多いのもまた素晴らしい。そういう意味でも、人を美しくしようという純粋な心を持つ研究者が、年齢を問わず本当に多いことに驚かされます」

まさしく日本の美徳こそJ‒BEAUTYの真髄。〝日本人の肌にはやはり日本の化粧品のほうが合う〟という昔ながらの仮説さえ、改めて説得力を持ってくる。日本人の肌やお手入れ習慣をつぶさに見ていなければ生まれない発想や技術の結晶、私たちにとってJ‒BEAUTYがいかにかけがえのないものかがわかるはず。

「確かに日本の化粧品には瞬発力が足りないとの見方もあります。韓国コスメのようにあっという間に商品化できる瞬発力やトレンド感は大きな魅力ではありますが、データや安全性を愚直に積み上げていく日本のコスメは、いろんな意味で世界一という評価を得た実績もあり、たとえ韓国や欧米のコスメを選ぶことになっても、いずれJ‒BEAUTYに帰っていくという傾向も目立ちます。それを〝おかえりコスメ〟と呼び、J‒BEAUTYだけの価値の1つと捉えているのです」

でも今にわかに注目を浴びるロンジェビティ=不老長寿へのアプローチにおいては、J‒BEAUTYも独自のスピード感を見せている。

「これも今の潮流に乗ったのではなく、まさに過去の研究の積み重ねの結果として、流れの中に自然にロンジェビティがあったということ。日本の化粧品研究の水準の高さを物語ります。だからJ‒BEAUTYは各社がそれぞれ、うちのロンジェビティはこれです、という独自の主張を持てるのでしょう」

こんなふうにJ‒BEAUTYの魅力を誠心誠意見つめた末の提言であることがわかったが、この10月にはJ‒BEAUTYのフェスも開催する。メーカーと読者と美STが美を共有し合う温もりある時空が、実は美STの次なるテーマへの架け橋となっていくとも言う。2年8か月前に編集長に就任した千田さんがまず取り組んだのは「美STリュクス」という、一般女性から選抜されたビューティリーダーの組織化。単に美容好きなだけでなく、気持ちまで美しい女性たちとの出会いに学んだのが「美をシェアする」というテーマだった。

「お互い情報を持ち寄って美を高め合う姿を見て、気づかされたのです。自分だけが綺麗であれば、という自分軸ではない。友達や家族、周りの大切な人たちと美を共有し、みんなで綺麗になることが幸せにつながるのだと。その時美のシェアに不可欠なのが信頼であり、その象徴がズバリJ‒BEAUTYなのです。何がいい? と聞かれれば、J‒BEAUTYを勧め、長く語り継いでいきたいのは? と問われれば、J‒BEAUTYの名を挙げるように」

美STが創刊された17年前「40代になったら女は終わり」という見方が世の中にも女性たちにもあったはず。それを美魔女という概念で根底から覆し、やがて、「美STリュクス」という美容リーダーが美STを体現、“大人が主役の時代”を作り上げていた。時を経て、美STは「美をシェアして幸せというゴールへ共に向かっていく喜びある美容世界」を提示する、愛に溢れたメディアへと進化したのだ。そして人生観どころか、人生そのものを変える境地に立とうとしているのである。

齋藤 薫さん

美容ジャーナリスト、エッセイスト

約半世紀に渡り美容業界の第一線で活躍。コスメに対する深い愛を唯一無二の表現力で綴り、幅広い世代の読者を魅了。今年開始した美STのJ-BEAUTYプロジェクト企画でもたびたび執筆。

本記事は、美ST編集部が取材・編集しました。「美ST」は16年以上にわたり、40代&50代女性の美容とライフスタイルを追求してきた月刊美容誌です。
美ST2026年12月号掲載

取材/大山真理子 編集/𠮷田 梓

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