トイレで何度も起きてしまう…夜間頻尿の原因やセルフケアを紹介
「夜間、トイレに行きたくなって何度も目が覚めてしまい熟睡できない」といった悩みを抱えてはいませんか? 一晩に1回以上トイレに起きる「夜間頻尿」は、ただの不快感だけでなく、睡眠の質を下げ、日中の体調や気分にも影響してしまいます。夜間頻尿の原因や日常生活の中で取り入れられる対策を紹介します。
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1.夜間頻尿って?
夜間頻尿とは、夜間に排尿のために少なくとも1回以上起きなければならない状態を指します。加齢に伴い夜間の排尿回数は増える傾向があり、誰にでも起こり得るものです。
しかし、夜間の排尿が2回以上になると、途中で何度も目覚めてしまい、熟睡できないことで日中の疲労感や集中力低下、情緒の乱れなどを招く可能性が高まります。睡眠障害や QOL(生活の質)の低下にもつながるため、早めの対策が重要です。(※1)
2.夜間頻尿の原因
夜間頻尿の原因は加齢だけではありません。考えられる主な原因を3つ解説します。
①夜間多尿
夜間頻尿の原因の一つとして、夜間に尿量が多くなる夜間多尿が挙げられます。夜間多尿とは、1日の総尿量のうち、65歳以上であれば33%以上、若い人の場合は20%以上を夜間に排出する状態のこと。(※2)
加齢に伴い、腎臓での水分再吸収を促すホルモンの分泌が低下するため、夜間に作られる尿量が増える傾向があります。加えて、夜間に横になることで、下半身にたまっていた水分が血管内へ戻りやすくなり、腎臓の血流が増して尿が作られやすくなることも影響します。
また、糖尿病や高血圧、慢性腎臓病などの内科系の病気も夜間多尿につながる要因の一つです。むくみや疲れやすさ、動悸、息切れなどの症状もある場合は、こうした病気の影響を受けている可能性があります。(※1)
②水分の過剰摂取
就寝前の過剰な水分補給が夜間の排尿を誘発することがあります。特にアルコールやカフェイン入りの飲料は利尿作用を促すため、トイレの回数を増やしてしまいがちです。
また、サラダや果物、スープ・汁物など、水分を多く含む食材を夕食でたくさん摂ることも、見落としやすい水分過多の要因です。
③膀胱容量の減少
膀胱容量が減少して少量の尿しか膀胱に貯められなくなることも、夜間頻尿の原因の一つ。膀胱が過敏になる過活動膀胱になったり、膀胱収縮筋が弱ると、少量の尿でも膀胱が排尿信号を発するようになります。特に、加齢などによって膀胱の筋肉の筋力低下が起こると、貯められる尿の量が減少しやすくなるのです。
また、膀胱容量の減少は男女によって考えられる原因が異なります。男性の場合、前立腺肥大症によって排尿しにくくなり、結果として膀胱が過敏になることがあります。女性の場合は、子宮や膀胱などの臓器が下がる骨盤臓器脱が関係している可能性もあります。
3.夜間頻尿の対策方法
夜間頻尿は生活習慣を見直すことで改善できる可能性があります。生活の中に取り入れやすい対策方法を5つ紹介します。
①水分や塩分の摂り過ぎに注意する
夕方以降の水分摂取は、意識的に控えましょう。目安としては、就寝2~3時間前からは飲料をほとんど摂らないようにしたり、コップ1杯程度にとどめたりしましょう。夕食でサラダや果物、スープなど水分を多く含む食材や料理を摂り過ぎないないようにすることも効果的です。
また、塩分の過剰摂取は体内のナトリウム濃度を調整しようとして結果的に尿量が増えるため、塩分の摂取を控えめにすることも大切。汁物や煮物には減塩調味料を使用するなどの工夫をして減塩に努めましょう。
②マグネシウムを含む食材を摂る
筋肉の収縮を制御する働きがあるマグネシウムを摂ることも効果的です。マグネシウムは納豆、ほうれん草、あさり、発芽玄米などに多く含まれています。
朝食に納豆を食べる、ほうれん草を使用した副菜をプラスするなど、日々の食事にこれらをさりげなく取り入れてみましょう。
ただし、マグネシウムを過剰摂取すると下痢につながったり、血圧低下や吐き気などを引き起こす高マグネシウム血症につながったりする可能性があります。通常の食事であれば過剰摂取になる可能性は低いですが、サプリメントなどを飲む場合は摂り過ぎないよう注意しましょう。(※3)
③脚のむくみを改善する
弾性ストッキング(着圧ストッキング)を着用したり、夕方にウォーキングをしたりして脚のむくみを改善しましょう。脚のむくみを改善しておくことで、下半身にたまった水分による夜間多尿の防止につながります。
椅子に座った状態で同じ高さの椅子に脚を乗せたり、仰向けに寝転んで脚をクッションなどに乗せたりして足を少し上げ、休むことも効果的です。
④睡眠の質を高める
睡眠障害と夜間頻尿は関係しあっており、睡眠の質を改善することが夜間頻尿対策につながります。寝具や寝室環境を見直し、快眠できる環境を整えましょう。
例えば、体が冷えると交感神経が刺激されて筋肉が緊張し、膀胱の筋肉も収縮して尿意を感じやすくなります。寝間着なども見直して冷えないように工夫しましょう。
また、就寝直前のスマートフォン・タブレットの使用を控え、光による刺激を減らす、就寝2〜3時間前に入浴して体温を整えるなど、寝付きやすい環境とリズムを作るのが効果的です。
⑤漢方薬を試してみる
夜間頻尿には漢方薬を活用するのもおすすめです。漢方薬は乱れた心身のバランスを整えて、夜間頻尿が起きにくい体質へと導いてくれます。
夜間頻尿には「血行を促進して体を温める」「泌尿器系の働きを高める」「水分代謝を整える」「ホルモンバランスの乱れを整える」といった漢方薬を選びましょう。
<夜間頻尿におすすめの漢方薬>
・八味地黄丸(はちみじおうがん)
血行を良くして体を温め、加齢の影響で衰えた「腎」の働きを高めて頻尿や残尿感などを改善します。疲れやすく、手足の冷えなどがある人に向いている漢方薬です。
・清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
尿を作る働きを調整し、残尿感や頻尿に働きかける漢方薬です。胃腸が弱く疲れやすい人に向いています。
症状や体質によっては、上記以外の漢方薬のほうが良い場合があります。漢方薬に詳しい医師や薬剤師に相談すれば、自分に合ったものを提案してもらえます。専門家の力も借りながら、夜間頻尿の改善を目指しましょう。
<参考文献>
※1 日本泌尿器科学会「夜間、何度も排尿で起きる」
※2 日本泌尿器科学会「夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]」
※3 公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット「マグネシウムの働きと1日の摂取量」
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
編集/根橋明日美
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